老人は人薬
人薬ということを、精神科では言うらしい。
現実の社会の中で他人と交わっていくなか、精神の病気が、
自然と良くなっていくということらしい。。
わたしの場合、記憶障害で大学を退職のあと、4年くらい、
実家の寺にヒキコモっていた。
しかし、住職の父の病気など、環境が変化し、
檀 家 に、お参りに行かなくては、ならなくなった。
アタマが働かず、経文も覚えられないので、
経本の文字を、ずっと目で追って
蚊の鳴くような声で読経していた。
50歳になって、こんなことしているのは、自分でも、
恥さらし以外の何ものでもないと考えていた。
しかし、暖かい目で見てくれている檀家の人と
交わるなかで、そういう考えから少しずつ離れることができた。
やがて、あきらめというより、開き直りだが、
「病気は治らないけど、このままで生きていく」
「行けるところまで行けばよい」
そう考えられるようになって
3年たって、一人前の仕事ができるわけではないが、
失っていた意欲がよみがえり、
自分は、マトモになったと、感じるようになった。
さらに、2年後、どうしてか、わからないが、
記憶力が回復した。
わたしは、病院への通院をやめた。
わたしは、人との交わりによって、治ったのだと気づいた。
病院の外、クスリによらない治療が
専門家でもない人たちの善意で成り立つことを知った。